起案の背景と思い
「旅行会社が、なぜ缶詰を作るのか?」
その問いに対し、小糸美鈴さんは確信を持って答えます。「それは、地域の価値を一番知っているのが私たちだからです」と。
私は実家が農家なので、廃棄の光景を幼いころから目の当たりにしていて、これは見過ごせない社会課題であると常々感じていました。実際、市場に出回る前に農家側では約2~3割もの野菜が規格外などの理由で破棄されているんです。
丹精込めて育てられた農産物が、わずかな傷や形の不揃いという理由で、市場に出ることなく廃棄されていく光景。「地域の魅力を伝える」ことを生業とするJTBの一員として、このもどかしさを放置することはできませんでした。
しかし、入社数年目の若手社員にとって、既存の旅行商品の枠組みでこの課題を解決するのは容易ではありませんでした。そんな時、背中を押してくれたのが若手有志による新規事業創出プロジェクト「未来創造部会」でした。
「最初は『缶詰を作りたい』なんて言っても、誰も相手にしてくれないと思っていました。でも、部会では『面白いね、やってみなよ』と認めてくれる空気がありました。単なる思いつきを、ビジネスとして、そして社会貢献の形として磨き上げることができたのは、この場があったからです」
小糸さんがこだわったのは、単なる「支援」ではなく、「圧倒的な美味しさ」という感動を届けること。捨てられてしまうはずだった食材に、プロのシェフの技術と地域のストーリーを詰め込む。「食材に再び旅をさせる」という純粋な願いが、JTBという組織を動かし、一つの「缶詰」として結実したのです。
関係者コメント※当時所属
株式会社office 3.11 代表取締役 / 食品ロス問題専門家 井出 留美 氏
食品ロス問題に長年携わる立場から、「ロス旅缶」プロジェクトに監修として参画しました。規格外農産物や生産調整、漁業廃棄、災害備蓄食品など、統計に表れにくいロスは多く、実態は公表値以上と考えられます。その中で、長期保存と味の向上を両立できる缶詰は有効な手段です。異業種からの関心も高まる中、JTBによる取り組みは新たな気づきを生み、食品ロス削減への関心拡大に寄与しています。旅行と食の視点を掛け合わせた挑戦として、今後の広がりに期待しています。
未来創造部会 メンター・メンバー
彼女の提案は、旅行業の既存概念をいい意味で壊すものでした。でも、その根底にある『地域を元気にしたい』という想いは、JTBのDNAそのもの。彼女の行動力が、部会全体の、そして会社全体の大きな刺激になっています。
今後どのようにしていきたいか
事業の継続こそ、サステナビリティの本質
事業開発として3年目を迎え、現在は外部投資に頼らず、売上の中で運営を回すフェーズにあります。ボランティアではなく、収益を確保しながら事業を継続すること自体が、持続可能性を支える重要な要素です。もし短期間で終われば、再び在庫が残り、本来の目的である社会的価値の循環は止まってしまいます。だからこそ、事業を続けることそのものが、真のサステナビリティにつながると考えています。
関連URL
「“ロス旅缶”誕生ストーリー」未来創造部会発の新規事業
https://www.jtbcorp.jp/jp/jtbeing/2023/08/01.html
食品ロス削減に向けた取り組み「Sustainable Voyage Project」
https://www.jtbcorp.jp/jp/sustainability/action/article/241201_01.html
食品ロス削減と地域活性化を目指す「Sustainable Voyage Project」始動
https://www.jtbcorp.jp/jp/newsroom/2023/05/23_01_sustainable_voyage_project_01.html
第2弾「Sustainable Voyage Project」商品展開について
https://www.jtbcorp.jp/jp/newsroom/2024/02/06_sustainable_voyage_project-2.html
第3弾「Sustainable Voyage Project」発表
https://www.jtbcorp.jp/jp/newsroom/2024/10/15_jtb_sustainable-voyage-project_03.html
第4弾 商品拡大・流通連携について
https://www.jtbcorp.jp/jp/newsroom/2025/01/14_jtb_sustainable-voyage-project_04.html
法人サービスサイト ロス旅缶 サービス紹介ページ
https://www.jtbbwt.com/business/service/solution/promotion/recognition/losstabican/




